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2005年2月13日  調布「憲法ひろば」第1回例会での講演

改憲問題をめぐる最新の状況と全国の動き

「九条の会」事務局  高田 健

 憲法改正といいますか改悪の動きというのは、この日本国憲法が成立した時点からずっとあるわけですけれども、これはその度に波がありましたし、それからその度の動き、あるいは人々によってもまたその動きの形はいろいろと違っています。今日の改憲の動きは、今の特徴を考えると、やっぱり1990年代から今日に至る新しい改憲の動きが現在に続いているというふうに見たほうがいいと思います。

 例えば中曽根康弘さんなんかは、50年代から、憲法は変えると言い続けておりますし、あの人は首相公選制も含めて、私が若いころから東北本線で東京に来るときに、田圃に「首相公選」という看板が立っていたのを覚えているくらい、さまざまな動きをしていますけれども、そういう動きも含めて、今回の動きはやはり90年代、もっと端的に申しますと、1994年の朝鮮半島の核危機を契機にして今につながっているのではないかと思っています。1994年ですから10年ちょっと前。思い出すでしょうか。北朝鮮が核を開発している、ということで、当時のアメリカ大統領が、この北朝鮮を許さない、攻撃をする、というふうに動いた時期がありました。アメリカから見てたいへん危険なことをする北朝鮮をたたきつぶさなければ、アジア・世界の平和にとってたいへんなことになる、というふうに大上段にふりかぶりまして、北朝鮮を攻撃しようとしたわけですね。
 しかし、例えば、前の前のイラク戦争イラク戦争では、イラクをたたくには、例えばサウジアラビアがなければだめでした。今回のイラク戦争では、クウェートがなければ攻撃ができませんでした。それは、アメリカから直接に海をこえて、イラクや、今回の朝鮮問題で言えば北朝鮮に、直接飛んでいくというのは、大陸間弾道弾とか、そういう問題を別にすれば、難しいですから、実際に戦争をやるのは、最後は陸上兵力を投入しなければならないわけですから、その陸上兵力を、攻撃する国を視角において、そして全面的に総攻撃をする、ということになるわけです。
 1994年、それをやろうとしたときに、日本が、その役割を果たす必要があったわけです。それで、日本の政府、防衛庁に対してアメリカが、1059項目の対日要求を出しました。要するに、これから朝鮮半島で戦線をひらくにあたって、日本はこういう協力を米軍にしてください、例えば岩国基地からは戦車を送るので、こういうふうに運搬手段を確保してください、とか、物資のことなどを含めて1059項目を日本政府に要求したんですね。
 日本政府は、これを見てびっくりしたわけです。そんなことできっこない。現実に1940年代から日本国憲法のもとで、日本国憲法はさまざまな意味で戦争ができないような仕組をこの国につくってきました。さまざまな法律があります。同時にその直後にできました日米安保条約によって、この日本国憲法とはまったく別の法体系があって、この国はいつも、戦争をしないという平和憲法の体系と、日米軍事同盟を中心とした戦争をする法体系とがいつも平行して拮抗してきたわけですね。しかしながら、この、戦争をする、という日米安保同盟の体系も、一方では日本国憲法によって非常に制限をされるわけです。
  そういう関係できていますから、あのサウジアラビアのような役割をしてくれ、と言われたときに、日本にはそういう法律が完成していなかったわけですね。「無理だ」というふうに答えました。アメリカは戦争ができなかったわけです。
94年。北朝鮮をたたきつぶすことができなかった。それで、カーター元大統領が、今の金正日のおやじさんの金日成のところにとんで、握手して、そして収めてしまった。これは悔しかっただろうと思います。しかし収めざるをえなかったわけですね。
  それ以降でしょう。日本で一連の戦争法体系が次々と作られた。こんなことを繰り返していたら、アメリカはこの北東アジアで、本当の意味で軍事力を行使できない。足元を見られてしまう。安保「再定義」があり、「新ガイドライン」があり、「周辺事態法」があり、「有事法制」があって、今度の「国民保護法制」まで、一連の法体系がこれ以降急速に作られてきたわけですね。
 そして最終的には、アメリカは、こんな法律ではまだ足りないと。日本がアメリカと一緒になって集団的自衛権を行使できるようにしろと。これが今のアメリカの要求なんです。1994年からずっときている、その最後の完成が、この集団的自衛権の問題なんです。ほんとは時間があれば、集団的自衛権の説明もしたほうがいいんですが、全部はしょります。
  要するに、集団的自衛権というと、NATOとか、ああいうふうに、いろんな国が一緒になって、自分の国を護るんだから、いいように聞こえるんです。ぜんぜん言葉通り考えたら違うんです。日本でいえば、集団的自衛権というのは、日米攻守同盟です。日本とアメリカなんです。そして、アメリカの敵は日本の敵、日本の敵はアメリカの敵。お互いに敵対する国とは一生懸命戦いましょう、というのが集団的自衛権なんです。

  だから、もし、日本とアメリカとの間で、日本が集団的自衛権を行使する、ということは、今アフガンと戦ってます。イラクと戦ってます。そしてライス国務長官は、六カ国挙げました。北朝鮮も、イランも、ジンバブエも、ベルロシアも、これらはみんな敵だと言いました。これらと戦うときには、もし日本が集団的自衛権を行使するとすれば、日本も一緒に戦うんです。今イラクでは、一応集団的自衛権が使えないとうことになってますから、サマワにいるんです。集団的自衛権が行使できるんだったら、バクダットに日本の軍隊の本部があるんです。使えないことになっているんで、日本の政府は、泣く泣く「非戦闘地域」という、わけのわからない概念をもうけて、サマワにいるわけです。こういう違いです。集団的自衛権を行使するかしないか、というのは。
 アメリカは、これをやってもらいたいんです。今の改憲の動きというのは、これに間に合わせるための改憲の動きなんです。ここに一番の特徴が、私はあるというふうに思っています。
  ですから、もう政府のほうからは聞こえています。去年の
2004年の10月に、こういうのが、これは小泉首相の私的諮問機関ですが、ここが、小泉首相に、これからはこういうのでやりましょうという、安保問題の政策を出しました。これ以降の基本的な考え方は、「日米ガイドライン」は今度は新ガイドラインをやろう、と。日米安保条約の意味も「再定義」しようと。
  昔は、日米安保条約はどこまで適用されるかというと、「極東条項」というのがあります。「極東」というのはどこかというのも、国会で一生懸命議論をやってました。ところが先の「新ガイドライン」の中では、今度はマラッカ海峡まで、あの辺まで範囲が広がっています。今度の「新ガイドライン」は、事実上、アメリカがいう、「不安定の弧」とを言ってますが、最近はそういうことを言ってますが、中東まで、そして実際には中東どころかジンバブエまであがったわけですから、このジンバブエまで含めて日米安保体制が適用されるような、そういう意味で、解釈のし直しですね。「再定義」、この前「再定義」をしましたから、「再々定義」ですね。

  ほんとはこういうことはないんです。日米安保条約を改定するのが普通なんです。適用範囲がぜんぜん違っちゃってるわけです。本来、安保改定なんです。しかし安保改定やったらどうなるか、ということは、むこうも知っています。広範な民衆が黙ってないと思うんです。改めて安保とは何か、ということを考えると思うんです。そして今度改定された安保条約というものはいいものかどうか、みんな考えると思うんです。そして政府のひとつやふたつくらい吹っ飛ぶかもしれない。だからやりたくない。それで、解釈のし直しを勝手に日米政府とだけやるわけです。国会にもかけられません、基本的には。報告と論戦はやりますけど、義務はありません。そして「再々定義」というものをやろうとしているわけですね。繰り返しますが、今の改憲論議というのは、一般的に、ずっと戦後続いてきた改憲の一環ではありますけれども、そういう新しい含みをもったたいへん危険な憲法改正の動きなんです。そして実は
94年に朝鮮半島の核危機があった。おとといからの新聞は、今北朝鮮が核を持ったというふうに北朝鮮が宣言をした、あの日は新聞の一面にかきましたけれども、今日あたりになるとそれはほとんどのっけません。しかしそういう事態ではないと思います。アメリカの側がこの問題をどのくらい考えているか。日本の側がどのくらい考えているか。私たちがこうして今議論をしているときも、彼らはこの問題を必死に考えています。まさに1994年の核危機と同じことが、今2005年のこの2月に、核危機が始まっていると思うんです。そういう中で、私たちは「九条の会」を立ち上げたし、憲法九条をかかげて、戦争はいやだ、この東アジアで戦争をやってほしくない、北東アジアで戦争の再発をぜったい許さない、という運動を今やろうとしているわけです。たいへん重要なことだと私は思っております。
 普通なら平和の話だと、もっと明るいところから本来お話したらいいなあ、と思うんですけれども、事態はそういうふうに厳しいのが現実ですから、ほんとうに、このことを考えていただきたいなあ、と思います。

1、今日の改憲論の特徴

(1)幻の「自民党・憲法改正草案大綱(たたき台)」の意味するもの


  そういう中ででてきた改憲案のさまざまな改憲案の特徴はどういうものであるかを考えてみたいと思います。去年の11月です。自由民主党は、A判で32頁くらいの改憲の草案の「たたき台」というものを出しました。もうインターネットでとることができない。なくなってしまった。だから私は、「幻の改憲案」と呼んでいるんです。出た直後になくなった。自民党のほうの説明は、参議院をあまりにも軽視した書き方をしたもんだから、参議院自民党が怒って、そういう意味では党内調整が必要なので、いったん遮断します。これは、元防衛庁長官が作ったわけですけれども、その態勢もかえて、あの有名な森喜朗さんが中心になって作っていただきます、というふうに変えたんです。
 しかし、変えた本当の理由は何だったのか。これもまったく縮めて言います。陸上自衛隊の二佐・中佐が、現役の中佐が改憲草案というものを作って、八箇条を書いて、その八箇条を、自民党の改憲草案を作るプロジェクトチームに会議のときに全部渡して、そして討議しながら作った改憲案だということだということが、マスコミにリークされて、ばれちゃったんです。共同通信の政治部長が、誰からか手に入れたんです。

  その結果、これもほんとに、あんまり新聞で騒がれないのがおかしいんですけど、私はこれは三矢作戦計画に匹敵する、あるいはそれ以上の問題だというふうに言いました。そして、私たち市民運動は、翌日には、市ケ谷の防衛庁に、百人ぐらいで押しかけました。全国にアピールして、共同声明なども出しました。しかし、マスメディアについては非常に弱かったです。それに匹敵するほどの大問題だったですから、自民党は、そっくりこれをひっこめたんです。そして作り直す。作った態勢もやり直す。

しかしこれ、一年かけて作ったんですよ。この考え方を自民党が否定したわけではないんです。だから彼らは、12月に撤廃して、4月にはもう一度案を作ると言っている。半年も経たないうちに作る。それは作れますよね。もう改憲案があるわけだから。だから、形式的にはこれは撤回されましたけど、中身としては生きている。無茶に書き過ぎたところとか、そういうところはたぶん修正して、もう少し柔らかくしてくるでしょうけども、この改憲案というのは、自民党の中で生きているわけです。今度の4月に出すと言ってます。森喜朗が出すんですからだいたいどういうものかはわかるでしょう。「神の国」の人間ですから(笑)。こういう人が書くと言っているんです。本当は、この中身をもっと説明するといいんでしょうが、とりあえずとばしておきます。

(2)中曽根試案「世界平和研究所」(2005年1月20日)


  それから、中曽根康弘さん、今は「世界平和研究所」というものをやってますが、今年の1月にこういうものを作りました。これが彼の作った憲法改正案です。これも、全条項にわたって、憲法の前文から最後まで、全部対案が書いてあります。全面改憲です。言い忘れました。先程の自民党の改正案も、全面改憲案です。ですから、新憲法案と言ってもいい。これも、新憲法案です。例えば、天皇を元首にするとか。国防軍を持つとか。それから、自衛隊の海外派兵、特に平和問題での海外派兵は、これはけっこうだ、とか、いっぱい書いてあります。

(3)鳩山由紀夫「新憲法試案」(2005年2月)


  それから、この2月になって、今度はこの人が出しました。自民党ではありません。民主党の前代表です。鳩山由紀夫。これがまた全面改憲案を出しました。やっぱり天皇を元首にする。自衛隊容認。海外派兵容認、そういう方針。非常に共通しています。民主党は、米沢さんという、旧民社党系の副委員長がいるんですけれども、米沢さんを中心にした民主党内の旧民社党系のグループは、今月末から来月に、やっぱり改憲案を出します。それはまだわかりません。しかし、年末から立て続けに出ている改憲案は、みんな全面改憲案なんです。

2、経済3団体の意見書出そろう


  そして財界ですけれども、「財界3団体」とよく言われます。

 前は「経団連」と「日経連」は、「日経連」は主として労務政策をやる、というふうに別々だったんですけれども、今は併せて「日本経団連」といって奥田さんが会長をやっている。この奥田さんの「経団連」が1月18日、これも膨大な改憲案というものを出しました。これはサイトからとることが出来ます。

 その前に「経済3団体」の中の「日商」、「日本商工会議所」、「東京商工会議所」、大阪、でしたか、関西でしたかの商工会議所、これらが改憲案を出しています。さらに、2003年の時点では「経済同友会」が改憲案を出しています。「経済3団体」すべての改憲についての提案がこの1月出そろいました。

 自民党、民主党の大物議員たちが、次々と改憲案を出すのに呼応して経済界も作ってきたんです。昔、といってもそんなに昔じゃありませんけれども、経団連に今井さんという会長さんがいました。別に今井さんを褒めるわけじゃありませんけれども、今井さんは、自分たちは、経団連は、憲法改定とかそういうことに口を出すことはしません、と言っていたんです。金は出すけれども、改憲の問題では口は出すことはしませんと言っていたんです。まあ、本当かどうかはわかりませんけどね。実際は選挙のときとかはやるわけですから。しかし、経済団体ですから、建前はそういうことだという、それなりのけじめがあったんですよ。ところが奥田さんは堂々と「我が国の基本問題を考える、これからの日本を展望して」、という改憲案を出してきた。金も出すけれども口も出すという明確にそういう態度です。そのくせ経団連が出した政党評価という、通信簿みたいなもんですよ、各政党の選挙政策とか政策について、経済界のほうから評価をする。これは10点だ、8点だ、これは5点だ。というように。自民党も民主党も公明党も政策評価をする。それに応じて金を出す。露骨に言ったわけですよ、去年。露骨に言って半年後にこれですから、これにどういう態度をとるかということを言っているわけですよね。これに、この線でいくのかいかないのか、熱心か不熱心か中間か、かなりよくきかないか、それによって経団連があなたがたに出す金は違いますよ、そうすれば、選挙でマニフェストも何一つ作れないでしょ、という話なんです。ものすごい怖い話なんです、これ。

 経済団体がやはり軒並みこういう形で改憲の意見を出してきました。
  面白いことがあります。この経団連が出した見解と、さきほどから言った全面改憲案、新憲法の提案とは、違いがあるんです。金も出す口も出す経団連が言っていることは、まずは急いで九条を変える、それと憲法改正条項を改正しろ、ということです。今の憲法は改正するのにはあまりに難しすぎる。国会の3分の2と国民投票の過半数という改憲派から見て、このハードルはたいへん高いですよ。

  ここを変えよ、と。経団連は。まずそれをやれ、と。もちろん全面改憲を言う人たちもみんなそこは変えると言ってますよ。しかし、経団連はそこに絞れ、と言っているところが違うんですね。これはどういう意味を持っているのかということを考えなければいけない。自民党がたぶん4月に出すのも全面改憲案ですから。それとこの経団連の考え方と、どういう関係にあるのか。この問題は大きな問題です。今日のお話が終わるまでに結論が出ないほどの問題です。

3、改憲派によって予定されている改憲の道筋


  少し話を先に急ぎまして、そういう改憲派の人たちが、今どんな計画で改憲をしようとしているかということに触れます。まず森さんの「自民党改憲草案大綱の試案」というのが決定するのが来々月の4月です。その同じ4月に、憲法調査会の衣替えなどのための「国会法改定案」提出、「憲法改正国民投票法案」提出、衆議院憲法調査会と参議院憲法調査会がそれぞれ5年間やってきた憲法調査会の「最終報告書」提出と続きます。

5年というのは長かったですよ。私ほとんど傍聴して、沖縄の調査会でも北海道の調査会でも、仙台でも、どこでも行きました。最初のうちは、そんなに苦でもなかったんですけれども、途中からはほとんど意地ですね。もう、ここまで来たんだから、やめるわけにいかないと思いまして(笑い)。全部出てきましたから、たぶん、この点だけは私は、ここにいるみなさんより自慢できると思います。あるいは、日本全国でたぶん、私一人だと思います。というのは、衆議院の中山憲法調査会委員長にしても、彼が出ているのは、衆議院だけですから。参議院は見てませんから。参議院のほうは、委員長がどんどん何回も替わりましたからね。で、普段の時は委員は欠席したり眠ったり、と、さんざんっぱら、私は「週刊金曜日」に書きました。学級崩壊といったら、子どものほうがかわいそうだと言いました(笑い)。学級崩壊以下です。あまりそういうことをわんわん言われたもんですから、最近少し出席率が良くなったんです。それでも終わる頃は半分いませんね。眠ってます、私語してます、パソコンで別のことやってます。自分の順番だけきたら、秘書と相談して用意した原稿を一気に読み上げる、一気に読み上げて終わり。終わったらまた帰っていく、という、こういうことの連続なんですが、それにしても5年間全部聞いてくるなかで、そういう形だけは整ってきましたから、4月に最終報告書を出す、というわけです。

 こういう経過をたどって、今年の11月には、さきほどの問題の「自民党憲法改正案」を、今度は試案ではなくて、党の案として出す。それから、来年の3月には「民主党憲法改正案」を出すと言ってます。鳩山さんが出し、次に米沢さんが出すと言っているような、そういう様々な民主党員の改憲案を経て、来年の3月には出すと言ってます。私は来年の3月には無理だろうと思ってます。民主党はそこまでたぶんいかないと思います。しかし、そういう予定です。

 それから、07年というのはご承知のとおり選挙の年です。統一地方自治体選挙、東京都知事選挙とか区議選とか、さまざまなのが4月にあるわけです。それから、6月か7月に参議院選挙があります。それからそのころは、ちょうど衆議院選挙が終わって3年目。だからいつ解散があってもおかしくないという時代に入ってます。だから、一番端的に言えば、07年にこれらの選挙がみんなあるかもしれない。もしかしたら衆議院はその前になるか後になるか、これはわかりませんし、今の国会の、例えば郵政民営化法案がどうなる、なんていうときに、最後、小泉純一郎ですから、まあ無いと思いますけれど、ぱーんとパンクしちゃって解散なんてことがあるかもしれない。まあ、今年はないと思いますけど。

 ですから、07年というのは選挙の年になります。選挙というと、最近は各党がマニフェストというのを出すことになってます。綱領、ですね。だいたい、百貨店のように、なんでも書いてあるわけです。ぜんぶ書いてありますね。どこも、平和を言うし、どこも自由を言うし、民主主義を言いますから、なかなか区別が面倒だから、党首の顔で区別するみたいなことがあるんですけど(笑い)。しかしそういう中で、この前の選挙のときも、憲法改正というふうに、もちろん自民党なんかは書いたわけです。書きましたけれども、いざみなさんのところの選挙の現場に行って、自民党の候補者が憲法改正の必要性を一生懸命説く、というのは、めったに見ないんですね。書いてはありますけど、行ったらやっぱり、この東京を良くしてきたのは私でありますとか、あの人気の石原さんと私は友達で、昔ごはんを一緒に食べましたとか(笑い)、こういう話ししか実際にはしないわけですよね。

 しかし、今回ばっかりは、もう、憲法の問題はまったなしに進んできてますから、たぶん、憲法の問題は相当大きな問題になるはずです。地方自治体の選挙ですら問題になる、あるいは問題にしなければいけない、という選挙になっていくと思います。そうして、彼らの計画ではそれらを経て、そこから先、党の形が今のまま残っているかどうかわかりません。自民党、公明党、民主党、社民党、日本共産党、なんて、党の形がそれぞれみんな残っているかどうかはわかりません。政界の大改変というのがありえます。それはわかりませんからそのときはそのときなんですが、いずれにしてもそういうのを経て、09年から10年くらいに憲法改正の発議と国民投票をやりたいという計画です。

 よく07年にやるんじゃないか、という人がいるんですけれども、まあ、これは向こうがやることですからこっちがあれこれ予測して論争してもつまんないんですけど、私は07年にはないと思います。そしてある程度そういうのを正確に見通しておかないと、私たちの運動をどう組み立ててていくか、ということに関係しますから、向こうがやることだからわかんねえよ、と言っていただけでは話にならない。だから申し上げますけど、07年は、政策を訴えて、憲法問題の争いにはなりますけど、国民投票というところまではいきませんね。一生懸命そういうことを言っている人がいます。衆議院選挙と国民投票とを一緒にやるんだとか、参議院選挙と憲法改正の国民投票を一緒にやるんだとか。それはないでしょう。

 しかしこれは、向こうのスケジュールであって、まったくこれに入っていないのは、私たちのことなわけです。当然。私たちはそれを阻止するために動きますから、今申し上げたのは別に、あいつがああ言ったんだから、でも後で、そうならなかったんじゃないか、とそう言われても私も困るんです。向こうの計画通りにならないようにやろう、という話に来たわけなんですから(笑い)、この計画通りに考えないでいただきたいと思います。

4、今後の改憲の道の2つの可能性


  その上で、先ほどちょっとふれた、どういう改憲を向こうがやってくるんだろうか、という問題にちょっとふれておきます。新憲法を作るのか、それとも経団連が言うような方針でとりあえずくるのか、ということなんですね。これも大問題なんです。

 結論。新憲法を作るなら、今から5年程度の議論ではたぶん無理です。この憲法の全条に関して、この日本社会にいる有権者たちがこれに賛否を意志表明をするわけですね、国民投票というのは。それは無理ですよ。まだほとんど議論されてないことがいっぱいあるじゃないですか。まあ、九条を中心としたものでは、それでも、ここのところの10年や20年、ずっと何十年も論争してきている。しかし、それ以外ではほとんど論争されてませんよ。だから私は、新憲法を作るのは、短期間には無理だということは、自民党も知ってると思うんです。これを出している人も知っていると思う。しかし出してるわけです。そして先ほど言った、1994年の核危機から話したのはこの話と関係いたします。今アメリカが一生懸命急いで、そしてそれに呼応しながら日本の財界独占資本が急いでいる憲法改正の最大の課題というのは、確かに天皇さんの問題もたいへんですよ。でもあれは、とりあえず皇室典範でやっておけばいいわけですから。考え方によれば。いろんなたいへんな問題はいっぱいありますよ。確かに。この国はたいへん危機なところにきてますから、一個一個たいへんなんです。

しかし何よりも急いでいるのは、集団的自衛権の問題だ、というふうにさっき申し上げました。つまり、憲法の前文と九条に関係する項目が、日米安保体制のもとで、改憲する、緊急に改憲すべき最大の問題なんです。私は経団連はそこを言ってるんだと思います。しかし他も変えたいわけですけどね。それは経団連だってそう思ってるんです。だからとりあえず、あとは憲法を変え易くしておこうと。今のように、国会の3分の2の賛成を得る、というと、自民党と公明党だけではどんなにがんばったってできない。そうすると、ともかくも、野党第一党の民主党の大半の賛成は得ないと、3分の2にならないんです。

 これまで40年代50年代60年代はずっと、社会党と共産党を足すと3分の1いたんです。だから、憲法改正と騒ぎたくても騒げなかったんです。鳩山元首相のように、騒いでも、すぐ挫折をしてしまう。だから歴代の首相は「憲法改正はしません」と言ってきた。これは実は「できないです」ということを言っていただけなんです。3分の1以上ぜったいいましたから。共産党が増えたときは社会党が減ったり、社会党が増えたときには共産党が減ったり、そりゃいろいろありましたけど、合わせると3分の1以上いたのは間違いないですね。

 ところがこれを、「いたします」と言ったのが、今度の小泉純一郎が初めてなんですよ。あの中曽根さんですら私の代ではいたしません、と言っていたんですから。小泉純一郎が初めて言ったんです。そういう時代が来た、そういう可能性が来た、というふうに彼は思ったんです。同時にアメリカからのそういう要求に応えようというふうに思ったわけです。しかし、なかなか難しいわけですよね。小泉さんだって、岡田さんのご機嫌をとっていろいろ妥協しなければ3分の2にならないんです。改憲派は、こんなめんどくさいことは二度とやりたくないと思っているんです。過半数でできるようにしたい。ここを変えておけば、今回出さなくったって、来年できます。再来年できる。次々やっていけるんです。

 現実にドイツでは50回変えたとか、どこでは何回改憲したとか、そればっかり言う人がいます。日本は一回も改憲していない。新憲法なんて言うけど、古い憲法だ、なんて、だいたいこんな論点なんですね。だから、これと一緒に、経団連が言うように、この2つの項目を中心にして出てくる可能性がある。可能性ですが。

 しかしこの2つだけではなんとも底が見えているじゃないですか。私たちもここだったら説明しやすいですよね。これから変えといて、みんな九条変えたいんですよ。これからもっといっぱい変えたいから今度ルール変えちゃおうというんですよ。こんなひどいことないじゃないですか。と訴えたら、多くの人はうんうんって思うんです。これは向こうも知っているわけです。

 そんなことでやったんでは、やっぱり負ける。なんとか勝ちたいわけです。私たちより真剣かもしれません。ほんとに勝ちたい、というのは。ほんとに必死で考えている。だからどういう案を出して、私たちに攻勢をかけてくるか、ということについてはほんとに真剣に考えている。

 たぶんありそうなもうひとつの問題は、憲法調査会を聞いていれば、本当にそうだなあ、と思うのは、新しい人権ですね。これも今日は言う時間がありませんから省きます。新しい人権、環境権、プライバシー権だの、そういうのが憲法に書いてありません、だからこれを加えましょう、という、この論理です。これは民主党も大賛成です。そうすると、新しい人権と九条と憲法改正条項と、この3つを一緒にして、今度の改憲でみなさんどうでしょう、と言ってくるわけです。この可能性が一番ありますね。

 そして今出されようとしている国会に、今の国会は162国会というんですけど、この162通常国会に、国民投票の方法についての法案が出てきます。この法案なんですよ、問題は。国民投票だからいいだろう、という人がいます。そして憲法に書いてあるように、私たちには国民投票の権利がある。それはある意味では選挙権よりすごい権利ですよ。憲法改正国民投票の権利というものはほんとにたいへんな権利で、日本人は一度もまだやったことがないんですから。これをやるときっていうのは、たいへんなことなんです。その権利があると憲法に書いてあるんです。だから国民投票をやるための法案を作るのはいいじゃないか、という人がいます。

 選挙でも、国政選挙でも一般的には、国政選挙はいいことですよね。だから、自分たちで誰がいいとかどの党がいいとか、投票に行くというのは、それは大事なことです。しかし、選挙が大事だと言っても、そのための法律はめちゃくちゃな法律ができることだってあるんですよね。今の法律が小選挙区制でしょ。この結果、民意が反映しないんです。選挙は本来、民意を反映すべきなのに反映しない。一部の比較第一党にバアっと票が行くようになってる。いわゆる二大政党制というやつが作り安くなってるんです。本当の意味で民意が反映しない。 同じように、国民投票法案も、小選挙区制、あるいはそれ以上にひどい法律なんですよ。このことを、緊急に多くの人たちに、街頭で、町で、職場で、家庭で訴えてもらわないといけない。
  今言いました、憲法の、例えば、九条と新しい人権と改憲条項、これ、いいか悪いかと問われたときに、みなさんどうします? 一個一個問われれば、こう答える人がいると思うんです。九条を変えるのは反対。環境権とかというのは、なくても今できるんだけど、ほんとは、しかし、あるならあるでいいだろう、マル。改正条項はどっちがいいかなあ。と、人によって迷う。すると、マル、バツ、サンカク、というふうにできれば一番いいんです。一番いいというか、当たり前の国民投票法案なんです。ヨーロッパなんかでは「ワンイッシュー・ワンボート」っていうんですよね。国民投票とは、そういうふうにして問わなければいけないんです。

  しかし、3つ集めて、どうですか、と言われたらどうします? いらないものまで一緒に買わされるわけです。いらないどころか、それはうちに置いておきたくない、というものまで。うちに置いておきたい、というものと、こんなのうちには絶対置いておきたくない、というものを一緒にまとめて買ってください、と言われたら、みなさんどうします? これ独占禁止法というので「抱き合わせ商法」というのは禁止されているんです。(笑い)

  そうなんです。いけないんです。これを出すというのはあまりにもひどいから、今度国会で用意している法律では、この国民投票の投票方法については書かない、と。ひどいじゃないですか。いつ決めるのか。改憲案を出す国会で決める。その国会で過半数あったら決めれるわけです。で、自民党の方針はすでに、一括投票だというふうに決まってるんです。書いてみろ、って、一回。そしたら「抱き合わせ商法だ」と言って私たちが暴露して闘うから。だから書かない。こんなひどい法律ないでしょう。

  肝心なことを書かないで、とにかく憲法改正をやる法律を作っちゃう、というんです。これが知られてないんですよ。申し訳ないんですけど、私たちの運動も力及ばずして、まだ知らせきっていない。

 そういう国民投票法が、この162国会に出てくるんです。たぶん3月か4月に出てきますね。民主党が今動揺していますから、私たちが今からあきらめる必要はないと思います。急いで世論をおこして、民主党にも働きかけて、いろんなことをやってなんとしてもこの法律は阻止しなければならないと思ってます。

 しかしなによりも多くの人たちに、こんな最も大事な国民投票についてこんなでたらめな法律が法案の体をなしてないような法律が出るんだということを、ほんとに伝えていただきたいと思うんですよね。

5、展望  憲法改悪を阻止するために


  なんか最近の情勢を見てますと、さっきの、安保「再々定義」以降ですけれども、私もずいぶん国会に通いましたし、イラクのことでもほんとに若い子たちと5万人くらい日比谷周辺に集ってデモもやりましたし、今もやってます。勝てないんですよね、なかなか。みなさんそう思いません? 選挙やっても、勝ってもらいたい人たちがどんどん、申し訳ないけど、減る。それはみんな強がり言って、そりゃそんなこと言うけど得票率は増えた、とか、私の町では増えたとか、言う(笑い)。言うのはいいけど、でも、なんとなくやっぱり全体として負けムードですよね。正直なところ。こんなことでこの改憲という大問題、やっぱりこのままやられちゃうんだろうか、と思いません? それでも勝つ、と思っている人います?(笑い)

 「護憲は改憲に勝つ」っていう私の本、これ後ろに並べてありますけど、これぜひ読んでもらいたいんですけど、「護憲は改憲に勝つ」というと、ちょっとなんか神懸かりなんですよね(笑い)。 自分でいやなんですよ。護憲というのは改憲に勝つもの、って、私はなんか頭に思い込んで、主観主義の固まりみたいな(笑い)。ほんとは「改憲に勝つ護憲」というふうにしたかったんです。私の原稿はそうなってたんです。いつのまにか、本屋さんに直されちゃって。「改憲に勝つ護憲」というのは、改憲に負ける護憲もある、っていうことです。しかし、改憲に勝つ護憲もある、ということをこの中で書いてるわけです。あるんですよ。負けると決まったものじゃない。
  私たちはこの前の、3人のイラクの人質を奪還するときも、最近の反戦運動の中では唯一勝利した例ですよね。あれで若い子たちはすごい確信を持ってました。なんだ、市民運動って力ないと思ってたけども、やれば勝つときもあるんだね、って。私はそうだ、と言いました。なんで勝ったか。たくさん、みんなが立ち上がったと同時に、全世界の人たちと連携したんですよ。インターネットで、即座に連携した。もう今までの発想とはまったく違った発想でやって、毎日国会におしかけて、五日間で延べ2万人。全国でも闘った。そういう中で、たまには勝つこともあるんですよね(笑い)。で、肝心な憲法のときには勝ちたいですよ。どうやって勝つかですよね。

(1)世論は9条改憲反対が多数


  これもまたいつも強がりを言ってる話なんですけれども、この前NHKで、2日間憲法問題をやりましたよね。九条の会の加藤さんとか、大江さんとかも出ました。それなりにがんばりました。なかなかNHKの中で番組作るのはたいへんですから。今のあの問題と同じように。で、今度はラグビーでね、会社の名前が入ってたからって、それを放送しないなんて、めちゃくちゃな公共放送ですけど(笑い)、そういう中でやるのはたいへんなことなんですけれども、しかしそれでも、あのときのアンケートは、九条改憲反対、39対39ですよね。よく見てたら、改憲賛成のほうに、2度と戦争が出来ないように、もっとしっかり憲法九条を書き直せ、というのが10%あったんですよ。ご覧になったでしょ。だから、29対49なんですよ。あのときのNHKの調査でも。去年の日本経済新聞の9月の調査でいうと、これもいろいろありましたけれども、他の世論調査とまったく違って、若い人の中で改憲反対が再度大きくなってる、という、これはやはりイラク反戦の運動などの影響のなかで、若者の中で気持ちが揺れているのではないかという財界の御用提灯持ちの日本経済新聞の分析でした(笑い)。読売新聞ですら、未だに憲法九条と言えば、九条はいじらないほうがいいというのが多いんです。だからといって、いつも私が言うんですけど、6割も7割もいる、そう言うんですけど、しかし、6割も7割も自衛隊も今のままでいいと言いますし、日米安保条約も今のままでいいというんですから、これで安心してはだめなんです、もちろん。

 しかし、少なくとも九条を変えるな、という人がそれだけいる、ということはすごいことじゃないですか。だから、改憲派も怖がっているわけですよ。おいそれといいかげんにはできないから、本当に準備して、本当に攻撃をして、改憲反対運動をたたきつぶして、そういう中で国民投票にもっていかなければ負けるかもしれないと思っているわけなんです。「私たちは6割いるから国民投票には絶対勝つよなあ」なんて寝てるわけにいきません。足をすくわれてしまいます。これからですよ。その勝負は。私たちの運動が、例えばこの「九条の会」の運動が、そういう人たちのところに届くかどうか、なんです。やっぱり町で、私もよく渋谷の街でビラをまきますけど、相変わらずビラとってくれないですよね。ほんとにこの中で6割も九条維持したいと思っている人がいるのかなあ(笑い)なんて聞いてみたい気がしますよ。ほんとに。聞いたって答えないですしねえ。それはそういうもんなんだろうと思うんです。そこに届くかどうか、なんだろうと思うんです。
  だから、私たちは今までのような運動では、というと、今までやってこられた方には申し訳ないし、私だってやってきたんだから、今までの運動ではだめだ、とは言いたくない。しかしだめです。やっぱり私たちはそこのところの腹を決める必要がある。今までの延長をやってたら勝てるかどうかわかんないんですよ。その6割の民意が、永田町では改憲反対がたった5%でしょ。33
%いなくなったわけですよ。この現状はやっぱりいくら強がり言ってもしょうがないんですよ。ちょっと腹をすえて、明日から倍がんばるか、今までは、選挙になると百枚私はビラをまいたけど、今度は二百枚がんばるか。全国の人がそういった、そうとう大きくなるに違いないという話だけをしててもなんだか・・・こんなことばっかり言っても怒られますよね(笑い)。違うでしょ、やっぱり。
  私は、この本の中でも「もう同心円運動はやめよう」と書いてますけれども、一つの政党なりがあって、その政党がうんとがんばって、去年までは百人の支持者を集めたけれども、あと来年はもっとがんばって二百人の支持者を得る、という、この努力をいくつかの政党がやっただけでは勝てません。私たちは、今度だけは勝たなきゃいけないとしたらどうするんだ、というのは、ほんとに大きな宿題なんです。「九条の会」も九人の人たちの共通した意志がそれだと言ってはいけないんです。しかし少なくとも事務局をやっている私個人は、そのために「九条の会」が活きてもらいたいと思っています。

(2)「九条の会」の意義と現状   「同心円」から「同円多心」へ


  どこが違うか。「同円多心」と言ってます。円の中に心がいっぱいある、それが一人でもいいしグループでもいい、党派でもいい、何でもいいんです。要するにどこか一つががんばってやるんじゃないんです。どこかひとつががんばって、あそこはウチよりだめだ、あそこはかっこが悪い、あそこは前に悪いことをした、うちだけは正しい、お互いにそんなことを言い合ってたら始まらないんですよ。いや、言わなくちゃ、特徴がないですから、それでもうちにこい、と言いたいでしょうから言ったらいいんです。自分も環境運動をやらなくちゃだめだよ、平和運動ばっかりじゃだめだよ、と言っていいです。言っていいけれども、その「同円」の円だけはぶち壊さないで、これを大事にする範囲でやってください、という、あるいは、「心」がグループではなくて一人でもいいんです。「自立した私」でいいんです。そういう人たちがみんな自分の責任で運動を始めるような運動を創らなくちゃいけない。

 私、「九条の会」事務局に、私の仲間たちといます。地方から、中央の「九条の会」はどう考えますか。方針を出してください。なんで出さないんですか、ということを言われることがあります。私は、だめだ、と言ってます。「九条の会」はそういうものじゃない。あなたが作りなさい、あなたの地域でがんばってください。「九条の会」はあの九人人たちのグループにすぎません。中央司令部でもなんでもありません。これがトップになってみなさんのところに方針を出すんでもありません、と言ってます。そういう運動を創らなくては、私は勝てないと思います。そういう運動が、6割の人のところまで届くかどうかだと思うんです。
 
だから、この「調布・九条の会」だけでもだめなんです。調布の中にいくつの町があるでしょうか。その町の「九条の会」ができてほしいんです。今できてる中で、名前は違いますけど、「高田さんちの九条の会」みたいなのがあるんですよ。おとうさんとおかあさんと子どもさん三人で作ったんです。私、これいいなあ、と思いましたね。毎月一回、憲法について話すんだ、というんです。普段はやっぱり話しにくいでしょ。照れくさいですし。ただ、決めてある、と。今日は、九条の日だ、と。そういうのもあるし、町内会の範囲の「九条の会」もあるんです。もちろん、市のレベルのもある。それから職業で、宗教者の人たちで、というふうに、いろんな「九条の会」ができます。宗教者の、今度できる「九条の会」は、ものすごく広いですよ。かつてこんなことがあったのか、と思うような人たちが名前を連ねて。

  私個人の意見を言えば、「専守防衛」というのは憲法の解釈が間違っていると思ってます。「専守防衛論」というのは、私は解釈改憲であって、誤りだという意見を、私個人は持ってます。九人の人がどう思っているかは別です。三木さんは思ってないと思いますよ。三木首相が今でも好きなんですから。三木さんは別に、自民党から改心をして「九条の会」に入ったのでは全くないんですからね。三木首相がいまだに大好きで、三木首相の考え方を生かせば日本はよくなる、と確信している人ですから。この人は「専守防衛論」です。みなさんは「専守防衛論」をとってない方が多いかもしれないけれども、「専守防衛」なんてうそっぱちで、あいつらなんて仲間じゃない、なんて、そういう会じゃないんです「九条の会」は。

  「専守防衛論」であれ、私は国家非武装論ですけれども、いろんな意見があると思いますよ。それらがみんな九条という範囲では一緒にやらなければならないんですよ。で、たまに酒飲んだときくらい議論しましょうよ。専守防衛なんておかしいんじゃないの、とか。いやお前のは理想的すぎるとか、これはやったらいい。

  こういう運動を作れるかどうかなんです。だから、率直に申し上げて、左翼の政党だけではだめだと思います。申し訳ありません、私は実は左が好きなんですけれども。しかしそれではだめなんですよ。自民党の中でも、財界の中でも、同じ気持ちの人たちが、本当にこれは仲間だというふうに、私たちが思えるかどうか。これまでにも似た運動はありました。しかしそれは刺し身のつまでした。そういう人がいたら。悪いですね、私はほんとに口が悪いから(笑い)、三木さんが「九条の会」にきたとして、三木さんはお飾りじゃぜんぜんないんです。「九条の会」のそれが誇りなんです。三木さんは自分から、あのお歳なのに、と言ったら悪いけれども、全国歩いて、彼女の主張を訴えるんですね、一生懸命。自分の会だと確信しているんです。私も三木さんと一緒のことをすごく嬉しいと思っているんです。決して何かのときに、名前で「三木睦子」というふうに出すんじゃないんですよ。こういう運動が作れるかどうかなんです。そうしたら、三木さんを支持する人たちが「九条の会」に入ってくる。井上ひさしさんが好きな人も、いつも怒りんぼうの加藤周一さん(笑い)が好きな人も入ってくる。いろんな人が入ってくるんです。そのときに初めて私は、その6割のところに届いていく運動が作れるんじゃないか。

  だから小森陽一も言うんです。会を作るのを急がないでください。立ち上げるのが大事なんじゃないんです。もうここは立ち上げちゃったから(笑い)ごめんなさい。でもこれからがまた大事なんです。立ち上げたら、やれやれよかった、ということじゃないんです。立ち上げるまでの間に、今のような仕組が作れるかどうかだと思うんですよ。だから私はよく言うんですけれど、自分は、比較的左がかってると思う人がいたら、比較的右がかってるなあ、と思う人に、一番最初に相談に行ってくれませんか、と。これをほんとに一緒にやりたいんだけど、どうだろう、と。計画を全部持っていっちゃだめですよ。全部、役員案まで、方針案まで作って、会場までとって、これやるんだから手伝ってくれ、っていったってだめですよ。一番最初のところから、まあメモくらいもってってもいいですけど(笑い)、どうでしょう、と。自分の意見もやっぱりへこませて、向こうの意見も入れて、一緒に作る。私は、三木睦子さんのところに行ったんです。怖かったです(笑い)。粘土細工からずーっと見せられました。私は毎週これやってるのよ、って。それをやってくださいよ、これから。調布にももっともっといっぱいの人、たくさんの人がいると思います。みんなで手分けしてやる必要があるんだと思います。そのときに、その人を支持する人たちがついてくるんですよ。

 今「九条の会」が、全国で千個くらいできました。今度京都に行って、京都は今月の26
日に、各地にある「九条の会」が一度集ってみようか、どんなことやってるのか、みんな相談してみようか、というので私が行きます。56個。その会議に出てきます。長野県は数えようがありません。百個越えてると思います。県によっていろんなのがあります。しかし、中身はみんなさまざまです。私のような人間だけで作ってる、そういう「九条の会」もあります。ワールドピースより狭いような、もっと狭いような(笑い)。それから、逆に、信濃町という長野県の町の「九条の会」のように、17人の町会議員さんがみんな入っているというところもあります。その中でたぶん、護憲派の政党に所属しているのは17人のうちに2人しかいないはずなんです。ほとんど保守の人たちが一緒に作ってます。このまえ、この議長さんのところに「公安」がいったそうですね。余計なこと言っちゃいますけど、すごいですねって、議長さんびっくりしたそうですね。自分が九条を守るというのに公安がくるのかってね(笑い)。でも、来るだけで、ものすごい圧力ですよ。私は公安というのは正しいと思いますよ。あまりそういう私が一番宣伝したい、町議会みんなが入ってやりだしているようなところにとりあえずたたいておけ、ということで、わざわざ長野県の町まで行くんですから、公費使って。許しがたいですよ、ほんとに。
  とにかく、さまざまありますけれども、多少私が思って、ほんとにこの九人が入っているような状態で作ってもらいたいのになあ、と思うけれど、井上さんのファンだけで作ってるような「九条の会」がないわけじゃないんですけど、それはこれからでも間に合いますから、思い切って、やっぱり、三木さんも含めて、全部が一緒にやってるような「九条の会」を作ってってほしいんですね、時間がかかってもいい。急がば回れ、という言葉もありますから。さっき言いましたように、ここ何年かの間に改憲がきますけれども、その前に一回くらい五千万署名くらいやってみようじゃないですか。今まで日本人は五千万署名ってやったことないですから。在日の人ももちろん、子どもまで含めてかまいませんから五千万署名やりたいですよね。それも私個人の意見で、「九条の会」の意見ではありませんけれども。そういう「九条の会」は今千個ですけれど、五千個できて、あるいは今地方自治体は三千三百から合併で減って二千五百になりましたが、この二千五百に、最低全部「九条の会」を作りましょうよ。それだけじゃなくて、そのもっとちっちゃいところに作りましょう。「高田さんちの九条の会」も作りましょう。そして一万とか、ほんとに私たちがここ一年二年、もしかして三年もいいかもしれない。それくらいの間にそういうのを、「九条の会」という名前でなくてもいいです。私は市民連絡会という、憲法運動やってます。市民連絡会でもいいです。いろんな名前の、そういう一緒にやれる共同のネットワークを全国の至るところに一万、二万というふうに作り出したら勝てると思いませんか。私は、東北の福島県の、すごい山の中の、村で育ちました。村で一番偉いのは郵便局長と村長と青年団長と何何、というところです。あとは学校の先生と何何。そんな中で、郵便局長と、連合青年団の会長と婦人会長くらいでもいいから、私の村の「九条の会」を作ってもらいたいと思うんだけど。そしたら私は、あの田舎でも過半数署名だってできると思うんです。これらがやれれば署名してくれるんです。

  そういうことをここ一年二年三年かけてやりたいと思っています。