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国民投票法案のねらい

2006年1月22日 11回「憲法ひろば」での笹本 潤さん(弁護士)の発題

 弁護士の笹本です。私も世話人の一人ですが、なかなか参加できず、せめてもの償いとして、一回ぐらいはちゃんとした形で話をしたいと思いました。先ほども紹介されましたが、普段は弁護士活動の他に、憲法9条の国際活動をメインにやっています。今日の話も前半は国民投票法案の話ですが、後半は世界の中で9条がどういう風に見られているかを話したいと思います。

 国民投票法案のねらい

 まず、国民投票法案からお話します。

 これは今説明されたように、通常国会が始まって、自民党、公明党、民主党が本気で、この法案を通そうとしています。法案自体はまだちゃんとした形になっていなくて、自民党・公明党の案が一つあり、それに対して民主党の考え方はまだ法案ではないのです。まだ統一案にまとまっていないのです。資料としては、例えば本でしたら、大月書店から出ている『国民投票法案』、また学習の友社の『憲法問題資料集』というのもあります。ただかなり前の法案も入っているので、今回はポイントだけ押さえればいいのではないかと思って、資料として添付しませんでした。今度の国会では、法案という形になって出てきますので、日々の新聞とかに目を凝らして、どういう形になるのか注目して欲しいと思っています。今日は主に今出ている案の段階で、どういう点が問題になりそうか、どの辺が悪い法案なのか、そもそもこういう法案を、今出すこと自体がどうなのかを中心にお話できたらと思います。

 憲法改正国民投票とは

 憲法改正の国民投票法というのは、憲法自体に定められています。憲法というのは普通の法律とは違い、ちょっとやそっとの雰囲気などで変えられてはいけない根本的な規範であって、変える手続きも普通の法律と違って厳重なんです。だけど普通の法律は、衆議院と参議院の過半数の賛成で変えられます。予算案もそうですね。それに対して、憲法の改定は、96条に書いてあるように、衆議院、参議院それぞれで3分の2以上の賛成で初めて憲法改正案というのが出せるのです。そこでまず大きい段階があります。

 現在公表されている国民投票法案

 今回、自民党は憲法改正案を出しました。しかし自民党と民主党を合わせなければ議員の3分の2になりませんから、一つの案にして国民の前に提案しなければならないのです。そういう意味でも、すごく憲法改正はしにくくなっているのです。現実にまだ自民党の案は、民主党と同じではないのです。憲法9条をめぐっても、海外で武力行使を認める点では同じですが、民主党の案は、国連決議があったときということで、まだ曖昧なのですが、そういうところで違います。それから国会ではまだ出来ないと思いますが、これから一つの憲法改正案として成り立たせていく作業が必要になります。それにはまだ2〜3年から5年くらいかかると民主党の人なんか言ってます。ただ憲法改正の国民投票法がなければ憲法改正は出来ませんから、まずそれを作ろうというのが今回の動きですね。日本経団連などの財界もこれまでは憲法についてあまり発言してこなかったのですが、憲法9条と96条のこの二つだけは何とか変えていかなきゃいけないと言っています。国民投票と言うのはこれまで日本で一回も行われたことがなくて、初めての経験なんです。

 問題点1、最大の問題は憲法改正のための準備であること

 国民投票法を作る動きは1950年代にも一回あったのですが、その後、政治の場で憲法改正が日程に上ってきたことがあまりなかったので、国民投票法を作ろうという動きがなかったのです。この時期にこれを作ろうとしているのは、明らかに憲法改正を実際にやっていこうとする動きがあるからなんです。そもそもこれを何故今作るのかを考えれば、やはり憲法改正が狙いですから、そこが一番大切なところだと思うのです。私の属している自由法曹団は、国民投票法案には反対の立場ですが、実はそうじゃない考え方も一方ではありまして、憲法改正には反対なんだけれども手続き自体は作っておいた方がいいんじゃないかという考え方もあるんです。そういう法律自体がないのはおかしいのではないかと。法律を作ってその結果、改正に賛成・反対をちゃんと問うべきではないかという考え方もあるんです。ただ、実際に今国民の世論を見てみますと、憲法改正をした方がいいという世論が過半数を上回っていまして、9条についてはまだ変えない方がいいという世論の方が多いのですが、まだどういう方向に動いていってしまうかわからないということを見れば、やはり国民投票法案の流れ自体を食い止める必要があるのではないかと思うのです。たださっきも言ったとおり、これは法案ですから、衆議院と参議院の過半数で通っちゃうんですね、自民党と公明党だけでも通っちゃうんです。そういう意味では反対運動をこれからするにしても、通ってしまう可能性はあるわけです。ですからこういう動きに反対しつつも、通ってしまった場合に備えて9条改正反対のこういう憲法ひろばのような運動を怠らないでやらないといけないんじゃないかと思うのです。

 問題点2、個別条項投票制にすべきこと

 内容の問題にはいりますが、一つは自民党と公明党の与党案というものなのですが、この法案には一括投票なのか個別投票なのか明らかになっていません。一括投票というのは、憲法の条文が百何条かあり自民党の改正案を見れば分かるように殆どの条文が変えられていますが、それを一括して国民に問う形が一括投票です。個別投票制というのは、極端に言うと一個一個の条文について全部○か×かを問う方法です。どっちの形にするかは、自民党と公明党の案では、今後どうなるかわかりませんが、今のところ明らかにしていません。それに対して民主党の案というのは、原則としてはバラバラに、国民に賛成か反対か問うという風にしています。一括して投票するとどういうことがあるかというと、例えば環境権と言うのが、今裁判でも認められている権利なのですが、これをちゃんと憲法にも明確に書いていこうという動きがあります。これ自体は積極的なことで悪いことではないのですが、それと9条の改正をセットにして、○か×かという風に問うてしまうと、あまり意識せずに9条も変えられてしまうというような結果が起こりかねないのですね。ですから一括ですべての条項を丸投げして国民に問うという形はすごく問題がある訳なのです。ですから私たちは、基本的には、一個一個の条項を個別に国民に問う形を考えています。でも百何条もあるからある程度整合性のつかない条項はまとめるけれども、基本的に9条とか環境権とか国会とか地方自治とか、テーマについては個別に国民に草案という形を示して、個別に○か×かをつけてもらう、そういう形の運動を求めていくべきだと思いますね。

 問題点3、投票までの期間は十分にとること

 それから投票期間ですが、これは今のところ与党案では、30日から90日以内としていますが、これもちょっと短いのではないかという意見がかなり多いですね。普通の選挙の場合は、議員を選べばいいのですが、国民投票というのは中身を考えなくてはいけないのです。国会でこれが憲法改正案と決まってから、9条だけでなく、もっと今の条文と変わるかもしれないのですが、国会で改正案が決まってから、2ヵ月か3ヵ月で本当にそれが正しいのかどうかを考えていかなければいけないというのにはちょっと無理があるのではないかということです。予想しなかった条文が出てきたら、何もわからないままで選択しなくちゃいけないことになります。今度は国会議員などの人を選ぶのではなくて、中身を選ばなければいけない、中身そのものを考えなくちゃいけないのです。そういう意味ではもう少し、せいぜい半年とかそのぐらいの期間は必要なのではないかなというのが私の考え方です。

 問題点4、総投票数の過半数で決すべきこと

 それから何票入れば決まるべきかという問題があります。憲法96条の条文の中では、「国民の過半数の賛成」と書いてあって、国民の過半数があれば憲法改正出来るとなっていますが、その場合の国民をどう考えるかということですが、三つ考え方があるのですね、まず有権者の過半数と考えるのか、二番目は実際に投票した人の過半数、三番目は有効投票の過半数、これは無効票を除いたものが有効投票です。で、憲法改正のしやすさという点からすると、有効投票の過半数、これが一番やりやすいわけです。ですから自民党、公明党の案では、有効投票の過半数で憲法改正が出来るという捉え方をしているのです。これに対して一番憲法改正をしにくいのは有権者の過半数です。例えば有権者を6千万人とすると3千万票ないと憲法改正は出来ないということになります。ただこれだと要するに、投票に行かなかった人も結果的に憲法改正に反対だと見なされることになり、ちょっとそれだときつすぎるんじゃないかということで、実際問題としてはAの総投票の過半数、無効票も合わせて総投票数の過半数です。日弁連の考え方もそうです。

 問題点5、投票率に関する規定を設けるべきこと

 総投票の過半数だとしても、投票率をどうするかという問題があります。やはり投票に行く人があまりに少なかった場合、仮に過半数だとしても本当にそれで憲法を変えてしまっていいのかという事があります。例えば、与党案というのは有効投票の過半数ですが、投票率が20%とすると、それで賛成票がぎりぎり50%だとすると、有権者の10%の賛成しかないわけです。6000万人くらいの有権者の10%で憲法が変えられるとしたら、これはあまりにも、過半数を上回ったとしても、国民が憲法を変えたというには、あまりにもお粗末じゃないかということで、日弁連の考え方としては最低60%ぐらいの投票率で、ぎりぎり通ったとしても30%ぐらいの賛成票がないと憲法改正は認めないと。そのように投票率を考え方をした方がいいんじゃないかというのが日弁連の意見です。

 問題点6、国民投票無効訴訟についての慎重な論議を

 次は、国民投票無効訴訟の問題です。これは国民投票が行われたとしても、何らかの理由で裁判になるような事があるのですが、例えばアメリカの大統領選挙でブッシュとゴアの時に相当もめたことがありましたが、ああいうようなことが起こり得るかもしれないのです。そういう場合に裁判を起こすわけですね。それについての規定として、例えば30日以内に提訴しなくてはいけないとか、全国の裁判所では訴えることが出来ず、東京の裁判所だけでできるというような限定したところなど、国民のサイドからするとかなり厳しすぎるということで、今後はもう少し、全国の裁判所でも訴えられるようにするとか、そういうような設定をすべきじゃないかというのが弁護士会の意見です。

 問題点7、未成年者の投票権の保障

 未成年者の投票ですが、自民党・公明党案は20歳以上なんですが、外国では18歳以上もありますし、民主党の案も18歳以上です。その辺の処から判断すべきだなと思いますが、実際問題としてどういう事が問題になるかと言うと、毎日新聞の世論調査では、9条改正反対の世論が62%あるんですね。その中でも特に20代の若者の方が70%、9条改正反対なんですね。若者ほど9条改正反対が多いのです。多分、これから戦争が出来る国になったら自分がどうなるかなという危機感もあると思うのです。そういう人達の意見を十分反映させた方がいいという立場からすると、できるだけ18歳くらいから投票できるようにした方がいいという考え方になるのかなあと思います。

 問題点8、国民投票運動の制限

 最後は、国民投票運動がいろいろな形で規制がかかる、制限されるという問題です。国民投票運動の制限は、国会でこれが憲法改正案だと一つの案が決まって、投票するまでの期間を取り敢えず想定すればいいと思うのですが、例えば3ヵ月とか6ヵ月とか1年とかわかりませんが、その間にこれこれをしてはいけなということが法案の中に定められています。一つは、公務員はその地位を利用して投票運動をしてはいけない。これは公職選挙法の中でも定められていますが、憲法改正の場合は、人を選ぶのではなくて内容自体を問うかたちですから、非常に議論しなくちゃいけないのですね。こういう規制が適用されると、公務員は議論だけもできないような惧れがあって非常に問題なのではないかと思います。国民投票法の運動については少なくともこういう規定を外すということが必要なのではないかと思います。

 学校の先生についても同じ様な規制があるわけなんです。学校の先生は特に授業の中で憲法を教えることもあるわけですね。憲法9条の大切さを教えたら、それは9条改正に反対だと捉えられちゃったら投票運動になっちゃうわけです。そういうことまで規制されたら何も出来なくなってしまいます。大学の先生などがシンポジウムなどで発言すると、地位を利用したと見なされて規制されるということも起こり得ます。

 そもそも普通の選挙と、中身を問う選挙だから、こういう規制自体かなり非現実的でおかしいということになってしまうと思います。議員の場合は人気投票のようになってしまうと困るというようなことである程度わかるのですが、今度は人気投票でも何でもなくて○か×かという判断ですから、選挙での制限と同じレベルの制限をされてはいけないのです。

 外国人の投票なども制限されます。こうしたことは後で憲法9条と国際関係について話しますが、9条改正に反対の会をもつ、そういう会合自体が出来なくなってしまいます。それから在日の方も日本にはいらっしゃって、選挙権はないのですが、そういう方も自分の生活に密着する事項の筈なのに運動自体が出来ないというような結果になってしまって、それもおかしいのではないかと思います。予想投票の禁止は、これは人気投票とは違うのでこれも規制する必要はないのでないかと思います。

 マスコミに対する報道規制などもそれ自体報道してはいけないというのではなくて、虚偽の報道とか事実をゆがめた報道とかがいけないということになっています。虚偽とか事実をゆがめてとかいうのは取りようによっていろいろなことが考えられます。例えば憲法9条が変わったらこうなってしまう、戦争になってしまうといったら、そんなことはあり得ないとして虚偽に規定さてしまうわけですね。そういう幅広い曖昧な言葉で規制するということは、かなり新聞などマスコミは萎縮してしまうのではないかと思うのです。それから新聞の意見広告についても、お金を払って買収するような形で新聞記事に報道などを出してはいけないというものですが、これも取りようによっては、後で紹介しますが、憲法9条を守ろうという意見広告を、お金を払って出すのが、財産上の利益の供与になってしまうと、国民にホントに必要な情報が行き渡らないということになってしまう心配があります。

 あと新聞とかマスコミの編集者の報道なども束縛されています。

 特徴的なのは、住居訪問だとかは実は禁止されていないのです。だから例えばいろいろな家を訪問して自由に話したりすることは、今のところ規制されていないのです。それ自体はいいのですが、実際問題としてはそんなに甘くないのですね。この間、例えばビラ配りでマンションに入るだけで、住居侵入罪で逮捕されて、立川テント村事件などいま、裁判で2審で有罪になっていますが、戸別訪問が住居侵入罪に当たる惧れがあるんですね。そんな話は聞きたくないといえばそれだけで住居侵入罪に触れてしまうんですね。ですから戸別訪問は禁止していないといっても今の裁判所とか現状からすれば、直接法案に関係ないかも知れませんが、そういう問題もあります。それから新しく国民投票の自由妨害罪では、暴力で投票者に威力を与えてはいけないとして処罰の対象になっていますが、なかなか曖昧な概念です。やはり説得に力が入って何度も何度もしつこく話すというだけで、威力に当たるかも知れないということですから、ビラとか戸別訪問とかある程度は自由なんだけれども実際問題としてはかなり厳しい条項になるということがいえると思います。

 前半の話のまとめ

 国民投票法案自体についての問題は、要件は今言ったような形でその辺がどういう風にこれから審議されるかということを注目して頂きたいなあと思います。

 確かに自民党と民主党だけで国会の過半数を超えて、通ってしまう可能性は高いことは高いのですが、何も反対運動が起こらず悠々と通すか、反対の世論の中でぎりぎり通すかということは、状況的にものすごく違いがあると思います。今後集会があると思うんです。弁護士会でも2月にやりますし、これからいくつか組まれると思います。そういうところに参加されるとか、署名を集めるとか、国民投票に反対という抵抗自体が憲法改正に対する備えとして、行動していただきたいなと思うのです。以上で、前半の国民投票法案の話を終わりたいと思います。

 憲法9条を国際的にとらえる

 後半の話は「憲法9条を国際的にとらえる」ということですが、先ほど司会の方から紹介がありましたように、GPPACという団体がありまして、「武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ」の略です。実はこれはもともとの発端は、国連のアナン事務総長が世界的紛争を解決したり防止していくためには、国家だけで国連総会などで話していてもだめなんだと。市民の力が必要なんだと言うことを言いまして、それに対して世界の市民団体とかNGOが、市民の方で国際紛争を予防するための提案を国連に対してしようじゃないかという様な動きになり、2001年ぐらいから始まっています。後ろにあるパンフレットにも書いてありますが、世界を15の地域の分けて漸く3年間かかって体制ができました。

 グローバル9条キャンペーンとは(ビデオを見ながら)

 ここで3分ぐらいのビデオを見て頂きたいと思います。

 2005年2月に、GPPACの東北アジア会議という50人位集まった会議の中で出てきた発言をまとめたものです。9条のことは皆さん、割とよく知っていまして、アジアに置ける重要な要素を占めるという話をしていましたし、ロシアの学校の先生は、「9条のことは教えてきた」と言ってました。韓国の方は「これ以上憲法を改案して自衛隊が大きくなったら北朝鮮に対して刺激を与えて、朝鮮半島がうまくいかなくなっちゃうんじゃないか。だから憲法9条を守っててくれ」というような言い方をしますし、そういうような意見を直接聞くと日本だけの問題じゃないんだなということがよく分かってくるんです。

 また去年の秋ぐらいにヨーロッパに行ってきたんです。弁護士など法律家の国際会議でしたが、そこで9条について訴えてきたんです。そうしましたらヨーロッパというのはある意味では地球の裏側ですから、どのぐらい反応が返ってくるかなあと思ったんですけども、知っている人は知っていて、憲法9条が変えられるかどうかというのは、日本だけの問題じゃないんだと言われました。なぜ彼らがそう言うかというと、ヨーロッパの反戦運動というのは特に盛んなんです。例えばイラク戦争が起こるというときのデモなんかは300万人の集会がローマやロンドンで起こっているんですね。特にアメリカのイラク戦争に対しては、国連の決議もなく国連憲章を守らないじゃないかという形での運動が活発です。法律家はそういう形で裁判を起こしていますし、憲法9条が、アメリカの要請で変えられようとしているところがすごく問題意識として共通になっています。もう一つは、国連憲章は、武力の行使もある程度認められているんですが、原則はやっぱり武力でない形で紛争を解決していこうということですから、そういう立場と日本国憲法の戦力を持たないという考え方が非常に共通するところがある。ですからこの9条が変わってしまったら世界的な問題になるということで、ぜひ変えないように頑張ってくれ、ぜひ一緒にやろうという呼びかけをしてくれたわけです。

 今度また、3月にヨーロッパに行って、憲法9条のことを訴えてくるというようになっています。

 昨年、憲法9条を世界に広めていこうという運動を、グローバル9条キャンペーンという形で名付けて運動を始めました。8月15日に各国の新聞に憲法9条を守ろうという意見広告を出す運動を展開したのです。アジアを中心に何カ国か実際それが出来たのです。憲法9条を守ろうという集会なども韓国、香港とか台湾でやりました。その辺はまたスライドで紹介したいと思います。

 これは香港の新聞に、香港の市民団体が出した広告です。これはコスタリカです。コスタリカも軍隊を持たない国として有名ですが、9条の条文を真ん中に書いてあります。これはモンゴルです。これは韓国です。沢山の市民団体の方が協力してこういう広告が出されました。これは英語ですがフィリピンです。これは漢字ですが台湾のものです。これは日本語ですが、朝日新聞の夕刊に出たものです。

 それから台湾と香港で、憲法9条を守れという集会の様子です。台湾は去年、終戦60周年という集会の中で、憲法9条を守れということもあわせて行われました。また台湾ではデモも行われました。

 そういうような運動を、去年はGPPACでやってきたんですが、こういう運動はGPPACだけがやる運動ではないし、できればあらゆる護憲団体とか、憲法を守ろうという団体が一緒になって今後ともやっていければいいと思っています。

 憲法9条世界会議について

 直接他の国の人から、9条を守ってくれと言われるとものすごく責任感を感じます。多分皆さんも感じると思います。そしてもっとやる気になると思います。そいうことで憲法9条世界会議と書きましたが、2008年の春、2年後ですが、東京で世界会議を開催します。そこで世界中の憲法9条を支持してくれる人を集めて、例えば1万人ぐらいの規模で大々的な集会を2〜3日かけてやろうというような企画を考えています。例えばノーベル平和賞を受賞した人とか、オノ・ヨーコさんとか有名な人を呼んでマスコミにも取り上げられるような形で、やりたいと思います。世界中からいろいろな人が集まって憲法9条の問題が日本で行われているんだということが憲法9条を守っていく上で非常に重要なのではないかなと思っています。2年後にしたのは、一つは準備がすごく大変ですし、あと、今度の国政選挙が2007年、来年の7月に参議院選挙がありますが、おそらくこの参議院選挙である程度陣営が固まって、本格的に憲法改正案がまとまるのが2007年から2008年ぐらいにかけてになるのではないかなという読みで、予定しています。その後いろんな団体とかいろんな人に呼びかけて、もっとしっかりとした実行委員会を作って勿論お金も集めなければいけないし、いろいろ考えていきたいと思っています。

 日本国憲法9条の国際的意義

 最後に、「日本国憲法9条と国際的意義」とまとめてみたのですが、いろんな世界の人の声を聞いていると、結局どういう声が多いのかなということを自分なりの難しい言葉でまとめてみたのですが、一つ目は、アジアとか世界の平和的共存のために9条が必要。これは簡単に言うと、憲法9条が自衛隊の海外派兵に歯止めになっていたということですね。それによってアジアとか世界の平和のバランスが保たれてきた、そういうような声がある。中国の方も韓国の方からもそういう声があった。韓国の方は特に朝鮮半島の平和的統一を目指して今、北朝鮮との市民間の交流というのが始まっている。2000年、5年前に金大中と金正日が握手をして、今後は平和的な対話をして行こうという機運が凄く高いのですね。それをぶちこわすのが憲法9条の改悪だということなんですね。韓国の人と話していて一番印象的なのが、北朝鮮の脅威が日本で言われるのですが、韓国の人に、北朝鮮は怖くないですかと聞くと、日本の方がずっと怖いと言うんですね。そのくらい違うんです、考え方が。日本がいかに鎖国的な状態かということが分かったんです。外から見るとそういう風に見えるんですね、日本は。そのくらい軍事大国だし、憲法9条を変えて、アメリカと一緒になってとんでもないことをやるという危機感が非常に強い。その点は私達も理解していかなくてはいけないと思うんですね。

 それから二つ目は、約束としての憲法9条です。それは憲法9条自体が、日本が戦争に負けて反省した上で、もう戦争はしない、軍隊は作らないという趣旨で作られたものです。

ある意味では、アジアの人とそういう約束をしたのです。だから学者に依っては、憲法9条は条約なんだという人もいます。韓国の人とか、中国の人からすればそれはもっともだと思いますし、特に戦争の問題については、小泉の靖国参拝など、ああいうような状態で憲法改正したら到底許されないんじゃないかと思います。

 三つ目が、非武装・非軍事の理念としての憲法9条、これは特に9条2項のことですけれども、やっぱり憲法9条の考え方というのは、軍隊を持たないということが戦争を防止するのに一番役立つという考え方に基づいている訳です。それは世界中にもそういう憲法を持っている国は少ないですし、特に経済大国でそういう憲法を持っているというのは日本だけです。やはり世界の平和運動からすると一つの大きい目標なんです。軍隊を持たないという考え方は、すごく目立つんですね。そういう目標を変えてしまったら大変なことになる、世界に一個しかないこういう貴重な憲法を変えてしまったら大変なことになるということで、絶対変えてくれるなと言われています。そういうことをより知らせていけば、世界は動いていますから、憲法9条を変えようとする人はアメリカ政府と日本の改憲派しかいないということがよりはっきりしてくると思うのです。世界の普通の市民は憲法9条の条文を知れば、改正には賛成しないと思うのです。日本がこれから海外派兵もできる国になるということを知れば、反対すると思うのです。そうすると日本の政府も国際世論的に追いつめられると思います。そういう状況を日本の内外で作りだし、日本の国民に知らせていけたらなあと思います。

四つ目は、アメリカの米軍再編の問題です。今、米軍再編の問題は、アメリカが日本の米軍基地や韓国の米軍基地の機能を強化していく、韓国なんかは人数は減少しているのですが、機能は強化していますし、日本の米軍でも自衛隊と米軍の司令部が一緒になるとか、基地を増やしていく。そういう中で憲法9条を変えようということがあって、これは特にヨーロッパの人達は、そういうアメリカの軍事による世界侵略に対する危機感をイラク戦争をきっかけとして非常に感じていますので、アメリカの世界侵略の一環であると言うことを訴えていけば、9条というのはかなり外国の方には訴えられるのではないでしょうか。

そういうような辺りが今まで活動してきた中で、感じてきたことであって、それは日本の憲法を守る運動の中でも知っておくことが必要ではないかと思います。こういった中で憲法9条の問題は日本だけの問題じゃないんだということが言えると思いますし、後ろにあるパンフレットなども参考にして頂きたいと想います。外国の人の声を伝えていくのは、憲法を守っていくための運動の、全てではないと思いますが、でも非常に重要な一部だと思っています。国際活動ばかりでもダメでしょうけれども、何処かでやっぱり訴えて続けていくことが今後必要になってきたのかなあと思っています。そういうことを訴えさせて頂きまして話を終わらせて頂きます。