2015年12月5日付「東京新聞「ミラー」欄掲載を転載
武力使わぬ立場を示せ ジャーナリスト 丸山重威(東京都調布市)
フランスの同時多発テロで、過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆が広がっている。米国は「対IS有志連合」に参加する五十九カ国を集め、空爆の強化やシリアの周辺国の国境警備に対する協力、それにテロに関する情報共有の強化などを求めた、と報じられている。日本からも岡野正敬公使も出席したと伝えられている。
日本はそれでいいのだろうか。安倍首相は今年一月、「ISの脅威を少しでも食い止める」と、「ISと闘う周辺各国」に「総額で二億ドル程度」の支援を表明した。ISはこれを理由に、後藤健二さんと湯川遥菜さんを殺害、日本を「敵」として脅迫した。首相は「支援は軍事援助ではない」と説明したが納得した様子はない。
中東情勢に多くの日本人が考えるのは「確かにISがやっていることはひどい。だが、空爆など武力でやめさせることはできない」ということで、明らかに米、英、仏などとは違っている。
そこで、もし日本がIS問題に関与しようというなら、現実的に国連などで、双方の間に立って話し合いの場をつくるという具体的な努力が必要ではないだろうか。幸い宗教的にも日本はキリスト教国でもなければイスラム教国でもない。
米国は既に昨年十月、日本を反IS有志連合にリストアップしているが、日本が「ISの敵」になることを防ぎ、日本人の安全を図るために、有志連合とは一線を画し、「武力を使わない日本」をアピールした外交を見せるべきではないか。「有志国参加」で胸を張る姿勢は、大問題である。 |